住宅ローンにまとまった繰り上げ返済をするべきか。
それとも、手元のお金を残してNISAなどで投資を続けるべきか。
住宅ローンを抱えながら資産形成をしていると、一度は考える問題ではないでしょうか。
例えば100万円の余裕資金ができたとします。
住宅ローンを100万円返済すれば、その分の将来の利息を確実に減らせます。
一方、その100万円を長期投資すれば、住宅ローン金利以上のリターンを得られる可能性もあります。
ただし、投資には値下がりがあります。
さらに住宅ローン控除を受けている場合は、繰り上げ返済によって控除に影響する可能性もあります。
つまり、
「住宅ローン金利より投資利回りの方が高そうだから投資」
という単純な比較だけでは決められません。
私自身も低金利の時期に中古住宅を住宅ローンで購入し、その一方で株式や投資信託への投資を続けています。
今回は、
住宅ローンを繰り上げ返済するのか、それとも投資を続けるのか。
この問題を、金利・住宅ローン控除・投資リターン・手元資金・FIREという5つの視点から考えてみます。
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月決められた返済とは別に、住宅ローンの元本の一部または全部を前倒しで返済することです。
一部繰り上げ返済には、大きく分けて2つの方法があります。
期間短縮型
毎月の返済額を基本的に変えず、住宅ローンの返済期間を短くする方法です。
将来支払う予定だった利息を減らしながら、住宅ローンを早く完済できます。
返済額軽減型
返済期間は基本的に変えず、毎月の返済額を減らす方法です。
住宅金融支援機構も、一部繰り上げ返済について「返済期間を短縮する方法」と「毎月の返済額を少なくする方法」の2種類を案内しています。
どちらが適しているかは、
総返済額を減らしたいのか、毎月のキャッシュフローを改善したいのか
によって変わります。
繰り上げ返済の最大のメリットは「確実に利息を減らせること」
繰り上げ返済の最大のメリットは、非常にシンプルです。
将来支払う利息を確実に減らせます。
例えば住宅ローン金利が年1%なら、元本を返済することで、その部分について将来発生する1%の利息をなくせます。
株式投資なら、
「年5%で運用できるかもしれない」
という期待値です。
実際には、
+20%の年もあれば、
-20%の年もあります。
一方、住宅ローンを返済することで減らせる利息には、株価のような値動きはありません。
その意味では、
住宅ローンの繰り上げ返済は、住宅ローン金利相当の支出を確実に削減する行為
と考えることもできます。
金利が高くなるほど、この効果は大きくなります。
ただし「住宅ローン金利1% vs 投資利回り5%」だけでは決められない
ここで資産運用をしている人なら、
「住宅ローンが1%で、株式投資で5%程度期待できるなら、返済せず投資した方が得では?」
と考えるかもしれません。
私自身も、この考え方は理解できます。
ただし、
住宅ローン金利と投資の期待リターンは、同じ種類の数字ではありません。
住宅ローンの金利負担は契約条件に基づいて発生します。
一方、投資の5%という数字は将来の期待値にすぎません。
例えば投資した直後に株式市場が30%下落する可能性もあります。
長期間保有すれば回復する可能性はありますが、その保証もありません。
そのため、
住宅ローン金利 < 投資の期待リターン
だから必ず投資が正解、とは言えません。
比較するときには、
- 投資期間
- リスク許容度
- 住宅ローン金利
- 住宅ローン控除
- 手元資金
- 年齢
- 今後の収入
まで考える必要があります。
2026年は「低金利だから放置」で済ませにくくなってきた
少し前まで、日本では住宅ローンの低金利が長く続いていました。
そのため、
「住宅ローンはできるだけ低金利で借り、余ったお金を投資する」
という考え方にも合理性がありました。
しかし、金利環境は変わっています。
2026年には日銀の政策金利が0.75%となっており、住宅ローンを取り巻く環境も以前とは同じではありません。
特に変動金利型の住宅ローンを利用している場合は、今後の金利変化を無視できなくなっています。
ただし、政策金利が上がったからといって、すべての住宅ローンの返済額がすぐ同じように増えるわけでもありません。
変動金利の適用方法や金利の見直し時期、返済額の変更ルールは金融機関や契約によって異なります。
まずは自分の住宅ローンについて、
現在の適用金利はいくらなのか。
次の金利見直しはいつなのか。
返済額はどのようなルールで変わるのか。
を確認することが重要です。
住宅ローン控除を受けているなら、繰り上げ返済前に確認したい
もう一つ重要なのが、住宅ローン控除です。
住宅ローン控除は、一定の条件を満たした場合、住宅ローンの年末残高などを基に所得税等の負担を軽減する制度です。
そのため、住宅ローン控除を受けている期間中に大きく繰り上げ返済すると、年末残高が減り、控除額にも影響する可能性があります。
さらに注意したいのが返済期間です。
繰り上げ返済によって一定の返済期間要件を満たさなくなると、住宅ローン控除の対象外になる場合があります。
つまり、
「お金が余ったから、とりあえず住宅ローンを返そう」
と考える前に、自分が住宅ローン控除を受けているのか、あと何年間残っているのかを確認した方がいいでしょう。
控除期間が終わった後に繰り上げ返済する、という考え方もあります。
繰り上げ返済の意外に大きなデメリットは「現金がなくなること」
私が繰り上げ返済を考えるうえで特に重要だと思うのが、
一度住宅ローンを返済したお金は、簡単には取り戻せない
ということです。
例えば500万円の預金があり、300万円を繰り上げ返済したとします。
住宅ローン残高は300万円減ります。
これは確かにメリットです。
しかし、銀行口座にあった300万円もなくなります。
その直後に、
- 病気やけが
- 失業
- 車の買い替え
- 住宅の修繕
- 子どもの教育費
- 親の介護
などでまとまったお金が必要になったらどうでしょう。
住宅ローンの残高が減っていても、そのお金を生活費として使うことはできません。
だから私は、
繰り上げ返済をする前に、十分な生活防衛資金を残すこと
が重要だと思っています。
「金融資産が住宅ローンより多いから安心」とも限らない
住宅ローンが2,000万円あっても、株式や投資信託を3,000万円持っていれば、
「実質的には借金より資産の方が多い」
と考えることもできます。
これは家計のバランスシートを見るうえでは重要です。
ただし、
住宅ローン残高2,000万円と株式2,000万円は完全に相殺できるわけではありません。
住宅ローン残高は基本的に契約に従って返済していきます。
一方、2,000万円の株式は市場環境によって1,500万円になることもあります。
だから、
「金融資産 > 住宅ローン」
だけを見るのではなく、
その金融資産の中に現金がどれくらいあるか
まで見た方がいいでしょう。
私は資産額そのものより、家計全体のキャッシュフローを維持できるかの方が重要だと考えています。
100万円を「返済」と「投資」に回したらどう違う?
ここで簡単な例を考えてみます。
100万円の余裕資金があるとします。
住宅ローン金利が年1%なら、100万円を返済することで、その100万円に今後かかる利息を減らせます。
一方、その100万円を投資し、仮に年5%で20年間複利運用できた場合、
100万円 × 1.05²⁰
で、
約265万円
になります。
数字だけを見ると投資したくなります。
しかし、ここには重要な違いがあります。
住宅ローンの利息削減は比較的確実です。
一方、
投資の年5%は保証されていません。
20年間の途中では大きな下落もあり得ます。
逆に、住宅ローン金利が今後上昇すれば、繰り上げ返済による利息削減効果も大きくなります。
したがって、この比較は、
1% vs 5%
という単純な数字ではなく、
確実な支出削減 vs 不確実だが大きなリターンを期待できる投資
として考える必要があります。
NISAを使えることも判断材料になる
投資側にはもう一つ重要な要素があります。
NISAです。
NISAでは、一定の範囲内で投資による利益が非課税になります。
そのため、まだNISAの非課税投資枠を十分利用していない人なら、
繰り上げ返済に使うお金をNISAへ回す
という選択肢もあります。
もちろん、
「NISAだから必ず儲かる」
わけではありません。
NISAは税制上の制度であり、投資そのもののリスクがなくなるわけではないからです。
住宅ローン返済とNISA投資のどちらを優先するか考えるなら、
NISAはいつから始める?思い立ったときから始める30日間ロードマップ
も参考にしてください。
私は低金利時に住宅ローンを組み、投資を続けてきた
私自身は、中古の一軒家を低金利の時期に住宅ローンで購入しました。
同時に、株式や投資信託への投資も続けています。
結果だけを見れば、これまでのところ投資を続けたことによる資産形成の効果は大きかったと感じています。
ただし、
だから「住宅ローンは返さず投資するのが正解」と言いたいわけではありません。
私が投資してきた期間には、株価が大きく下落する局面もありました。
今後も同じリターンになる保証はありません。
また、住宅ローン金利も今までと同じとは限りません。
だからこそ、過去の結果ではなく、
これから住宅ローンを支払い続けるリスクと、これから投資するリスク
を比較する必要があります。
FIREを目指すなら「住宅ローンを残すか」はさらに重要になる
私は50歳までのFIREを目標にしています。
そのため、住宅ローンについては単なる利息の問題だけではなく、
FIRE後の固定費
としても考える必要があります。
会社員で安定した給与がある間なら、毎月の住宅ローン返済はそれほど大きな問題ではないかもしれません。
しかし、FIREして給与収入が大きく減った後も住宅ローンが残っていれば、その返済費用を投資資産やその他の収入から出す必要があります。
一方で、FIRE前に住宅ローンをすべて返済すれば、必要な生活費は下がります。
ただし、そのために数千万円の金融資産を一気に使えば、今度はFIRE後に運用できる資産が減ります。
つまり、
住宅ローン完済=FIREしやすい
とも単純には言えません。
FIRE時点で、
- 住宅ローン残高
- 金利
- 毎月返済額
- 金融資産
- 現金
- FIRE後の収入
- 年金
- 生活費
をまとめて考える必要があります。
FIRE後にどのくらい生活費が必要になるのかについては、
FIRE後の生活費は何にいくら使う?年間300万・400万・500万・600万円で考えてみた
で詳しく考えています。
繰り上げ返済を考えるときの5つのチェックポイント
私は「金利が○%なら返済」という一つの基準だけで決めるより、次の5つを確認する方が現実的だと思っています。
| 確認すること | 考え方 |
|---|---|
| 住宅ローン金利 | 高いほど繰り上げ返済の効果が大きくなる |
| 住宅ローン控除 | 控除期間・控除への影響を確認する |
| 生活防衛資金 | 返済後も十分な現金を残せるか |
| 投資期間・リスク | 長期投資できるか、下落に耐えられるか |
| 今後の働き方 | FIRE・退職・収入減少を予定しているか |
特に重要なのは、
「繰り上げ返済した方が得か」だけではなく、「返済した後も家計が安全か」
だと思います。
「全部返す」「全部投資する」の二択ではない
ここまで考えてくると、
住宅ローンを繰り上げ返済する。
それとも投資する。
この二択で考える必要もないことが分かります。
例えば100万円の余裕資金があるなら、
50万円を繰り上げ返済。
50万円をNISAで投資。
という方法もあります。
あるいは、
住宅ローン控除期間中は現金を厚めに持つ。
控除終了後に一部繰り上げ返済する。
という方法もあります。
金利が上昇したら返済比率を増やすという考え方もできます。
資産形成では、
0か100かで決めない
ことも重要です。
まとめ|繰り上げ返済は「金利」ではなく家計全体で考える
住宅ローンを繰り上げ返済すれば、将来支払う利息を減らすことができます。
住宅ローンを早く完済できる安心感もあります。
一方で、
- 手元資金が減る
- 住宅ローン控除に影響する場合がある
- 投資に回せる資金が減る
- 低金利なら繰り上げ返済の利息削減効果も小さくなる
という側面があります。
逆に投資を選べば、住宅ローン金利を上回るリターンを得られる可能性があります。
ただし、それは保証されたものではありません。
だから私は、
「住宅ローン金利より期待リターンが高いから投資」
という一つの数字だけで判断しない方がいいと思っています。
住宅ローン。
現金。
NISA。
株式や投資信託。
収入。
生活費。
そして今後の働き方。
これらは別々のものではなく、一つの家計です。
特に住宅ローンのように何十年にもわたる負債は、
「最も得する方法」より「家計全体が無理なく続く方法」
を選ぶことが大切なのではないでしょうか。
私自身も、住宅ローンを持ちながら資産形成を続けています。
今後金利や資産額、そしてFIREまでの残り期間が変われば、住宅ローンに対する考え方も変わると思います。
そのときに、
返すか、投資するか。
ではなく、
今の自分の家計では、どちらにいくら配分するのが合理的なのか。
そう考えていきたいと思っています。
家計管理から投資、FIREまでの資産形成全体については、
にまとめています。
参考資料
- 国税庁「マイホームを持ったとき(住宅借入金等特別控除)」
- 住宅金融支援機構「繰上返済(個人住宅融資の場合)」
- 日本銀行「わが国の経済・物価情勢と金融政策」
- 日本銀行「最近の金融経済情勢と金融政策運営」
※住宅ローン控除の適用条件や繰り上げ返済の手数料・最低金額・金利見直しルール等は、契約時期や金融機関、商品によって異なります。実際に繰り上げ返済を行う場合は、ご自身の契約内容や最新の制度をご確認ください。

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